第1回
かがり火キャンプ
in手賀沼
後編
座談会メンバー
柏の各地には、柏を愛し、柏の明日と向き合いながら活動をつづけているプレイヤーたちがいます。そんな人たちが週末の夕暮れどきに「篝火(かがりび)キャンプ」に集まり、それぞれの領域を越えて“ここからつなぐ明日の柏”について語り尽くします。
今回「篝火(かがりび)キャンプ」に集まったのは5人のプレイヤー。社会起業家の油原祐貴さん。都市計画・まちづくりのコンサルタントの鈴木亮平さん。まちづくりに関わるプロジェクトの企画から運営までを担う荻野正和さん。すぎの梨園の3代目杉野耕資さんに、果樹農家の江口さやかさんが参加します。
後編では、手賀沼エリアで活動をつづけながら感じている地域の課題、そして、手賀沼が秘めているこれからの可能性についてトークを展開します。
新しい挑戦ができる手賀沼には
子どもたちものびのび育つ環境がある
堀口:コンサルティングとして関わってきた萩野さんは、何が課題だと思いますか?
萩野:鈴木さんのお話にもあった通り、風が変わってフェーズも移行しました。コロナ禍で自然豊かなエリアの希少性が改めて見直され、都市と近接しているというポテンシャルを持っている。いろいろなプラスの要素が重なって、手賀沼はいまベストな状態になっていると肌で感じています。これからは手当たり次第なんでもやるよりも、“手賀沼で大切にしたいこと”をしっかりつかんで、手付かずの部分を整えていくように動いていかなきゃいけないのかなと、僕は感じています。
堀口:鈴木さんはどう感じていますか?
鈴木:何か新しいことに挑戦する上ではすごくポテンシャルの高い場所だと思っています。杉野さんもおっしゃいましたけども、いま農家の若い世代は、新しい農家のスタイルをどう作ろうかと考えているんです。直売所もあるし、ネット販売もある。油原さんのやっている収穫体験もひとつのビジネスにできる。いろんな選択肢と可能性があるなかで、自分に合ったスタイルは何なのか、皆さん悩んでいます。手賀沼に通う立場の僕が、外から見ていてもすごく楽しみで、おもしろくなるんじゃないかなと期待しています。
堀口:みなさん、同じように「面白くなってきたぞ」という感覚はあると思うのですが、その理由は何だと思いますか?
油原:年間100万人が訪れる道の駅しょうなんを160万人呼ぶ施設にして、さらに手賀沼の奥へと人を呼び込もうというプランが、私はすごく秀逸だったと思います。実際、いま道の駅しょうなんが情報発信の拠点となり、多くの人が訪れて野菜を買うだけでなく、その奥の場所で農業体験をやる。そうやってどんどん“暮らしの豊かさ”を重ねています。
堀口:「これからこんな人に来てもらいたい」という議論はあるんですか?
鈴木:手賀沼アグリビジネスパーク事業推進協議会としては、近隣のファミリー層をどんどん取り込んで、手賀沼エリアで子どもたちに育ってほしい。流山市の東部近隣公園(やまびこ公園)周辺や柏の葉エリアから車で20〜30分で来れる手賀沼で、子どもたちにそれぞれ好きなものを見つけてもらう。生き物に興味があれば、先生になってくれる団体もありますし、野菜に興味があれば、体験農園で農家さんに教えてもらうこともできます。子どもたちがのびのび育つ環境としては向いていると思うんです。そのためには、さまざまな活動をきちんとお伝えして、手賀沼を好きになってもらうことが大事ですね。
江口:親になると子どもと週末どうやって遊ぼうかと考えたりするのですが、車ですぐの距離に身近な自然がある。アクティビティもあるし、沼辺でぼーっとするのもいいですし。こういう環境はありがたいと思いますね。
堀口:杉野さんはどうですか?
杉野:私たちは畑で仕事をしているので、自分の畑にいれば子どもに目を配れますし、育児の手は離れてるので子ども達は自由に遊んでいます。自分たちでスコップで土を掘ったり、セミの抜け殻を集めてポケットに入れて怒られたり(笑)。そういう様子を見ていると、子育ての面で田舎であることはメリットかなと思います。
可能性あふれる手賀沼エリア
人と人とのつながりが新しい風景を生む
堀口:改めて、今後の可能性について伺いたいと思います。萩野さん、いかがでしょうか。
萩野:可能性は秘めていると思うんですよ。時代もマッチしてきて、これからどうしていくかを考えると非常にワクワクします。手賀沼周辺は歴史的に見ても暮らしが要にある場所だと思うんです。手付かずの自然のなかで、住民が “里山の手入れ”をするように暮らしを紡いできた。縄文時代にも人が住んでいたほどで、集落も非常にいい形で残っている。時代的なことや環境、周辺地域との関係も含めて、可能性は非常に高まっています。そんななかで、手賀沼でどんな暮らしが提供できるのかもっといろんな形で情報発信をつづければ、手賀沼エリアを新たな形で次の時代へつないでいけるんじゃないかと思います。
堀口:いまはテレワークや副業も増えて、仕事をやめないまま居心地の良い場所に移住することもできます。選択肢が広がるように情報発信していくと、ターゲットも広がっていきますね。
手賀沼で生まれたコンテンツを、北柏エリアでの「暮らしの質を高める取り組み」につなぐこともできますか? みなさんの間で連携は生まれているんでしょうか?
鈴木:ここ何年かで手賀沼フィッシングセンターを整備して、SUPやカヌー、子どもたちの生き物観察など、いろいろな活動をする団体が現れたので、「ヌマベクラブ」という取り組みをはじめました。「ヌマベクラブ」のイベントには、北柏の人も来てくれていると思います。令和4年に手賀沼フィッシングセンター近くの手賀曙橋でライトアップイベントをやったときは、北柏の方が見に来てくれて「うちでもやりたい」と、その翌月にイベントをやってましたよね?
荻野:やってましたね。
鈴木:毎週手賀沼でやっているSUPも、北柏の方の水辺でもできるんじゃないかということで、10月に奥手賀エリアのチームがお邪魔する予定です。北柏には北柏のSUPの魅力があるんじゃないかと。
荻野:そういう地元の方同士の交流や情報交換は結構増えています。北柏ふるさと公園にある「花小鳥」というカフェが拠点になって、手賀沼周辺のスイーツのスタンプラリーも一緒にやっています。花小鳥さんのような拠点は北柏にはなかったので、そういうハブとなる場所、とっかかりになるような場所をもっとつくりながら、暮らしを豊かにするという大きな目的に向かって、身の丈に合わせて連携しているという状況です。
鈴木:自分たちの暮らしを楽しくするために、他の地域でいいものがあれば取り入れるし、一緒に組んで進められるならやってみようというスタンスですね。地域の人の活動や、農家さんの取り組みなど、ここ数年でいろいろなことが可視化されてきたので、興味があれば会いに行ける状況になりました。
堀口:油原さんは「地元の人発信で何かやろう」とお話されていました。江口さんは、ワイングラスのTシャツを着ていますが……。
江口:お話をふっていただいてありがとうございます(笑)。以前から米以外の農業で、人が集まって地域が活性化するようなことが、何かできないかなと考えて、4年前にワイン用のブドウを植えたんです。手賀沼エリアでワイン用のブドウはあまりないですし、日本ワインが流行っていることや、手賀沼周辺で人が増えてきているというタイミングもあって、ワインはどうかな? と思いつきました。地産地消のレストランがたくさんあるので、お酒もあるといいんじゃないかなって。
堀口:いいですね。
江口:ブドウの栽培はひとりで始めたのですが、ボランティアさんたちが30名くらい栽培を助けてくださっているんです。仕事があるので週末に、近隣の方や一番遠い方は横浜から通ってくださっています。ブドウ栽培を通して人との関係が広がって、手賀沼エリアに来る人が増える。その真ん中にワインがあり、地元のお料理が楽しめるという風景が、これから広がっていけばいいなって思います。
堀口:ワインができたら、道の駅しょうなんやカフェなどを通して、また新しいコンテンツも生まれそうですね。
鈴木:いろんなアイデアはあります。いまは飲食店さんが、地元のワインを出したいと興味を持ってますよね。
油原:すごくおいしかったです。
江口:ありがとうございます。
堀口:もうできているんですね。いつでき上がるんですか?
江口:令和4年に初リリースして、柏市内の飲食店に卸しています。レストランやカフェなど、いろいろなお店の方とさまざまな活動ができるといいですね。
油原:30人もの方がボランティアで、しかもひとつの楽しみとして訪れてくれるのはすごくいいですよね。週末行ける距離感の場所にあることも大事なんでしょうね。
堀口:ワインが好きな人はエリアを広げても来てくれると思うので、コンテンツとして強いですね。
江口:そうですね。こうやって協力してくれる方たちがいて、バックアップしてくれるので、本当にありがたい環境だと思います。
堀口:また手賀沼からさまざまなプロジェクトが生まれそうですね。楽しみです。この動画を見ている方にもぜひ関わっていただきたいです。今日はありがとうございました。
アクセス
●numa café(ヌマカフェ)
〒270-1451 千葉県柏市曙橋1
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●キングフィッシャーガーデン
〒270-1451 千葉県柏市曙橋1
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●道の駅しょうなん
〒277-0911 千葉県柏市箕輪新田59-2
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●北柏ふるさと公園
JR常磐線「北柏駅」下車 徒歩約10分
〒277-0001 千葉県柏市呼塚新田204-2
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