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守りつづけた農業で、地域を元気に。<

#05

広報かしわ 2023年11月号掲載

守りつづけた農業で、地域を元気に。

エリア北部

かしわで(株式会社アグリプラス 取締役会長)染谷 茂さん

毎朝地元の農家さんたちが直接届ける、採れたての野菜や果物がずらりと並んだ大型農産物直売所「かしわで」。新鮮な食材を目当てに、お客さんは朝早くから足を運びます。その様子をうれしそうに見つめているのが、染谷 茂さんです。190ヘクタールの大規模農場を経営する一方で、農家の仲間たちとともに一念発起し、この直売所を立ち上げました。柏で生まれ育った染谷さんは、50年もの間支え続けてきた地域の農業を将来へ つなぐ ため、どんな活動をしてきたのでしょうか。

仲間たちと直売所をはじめたのは
柏で つづく 農業を守るためでした。

大型農産物直売所「かしわで」は、旧田中農協(※1)を中心とした有志15人が出資し、平成16年にオープンしました。きっかけは「どうしたら、柏で農業をつづけていけるのか」と危機感を持ったからでした。なぜなら当時、中国産ネギの輸入が急増していたんです。ネギは柏市農業の基幹品目で 1箱1000〜2000円が相場。対して、中国産は1箱300円。そうなると当然、国産ネギも値崩れします。柏で、非常に質の良いネギづくりをしていた私の同級生にも、価格競争だけでは勝てないと農業を辞めてしまった方もいました。
これはどうにかしないといけないと、旧田中農協の若い農家とともに立ち上げた「ゆうき塾」で、塾長の故・今村奈良臣(いまむら ならおみ)先生(東京大学名誉教授)と勉強会や視察を重ね、たどり着いた答えが「柏市の都市化を逆手にとった直売所の建設」でした。人口40万人以上が暮らす柏の地の利を生かし、地域のお客さんによる 地産地消 。そして、柏のこれからを支える若い人へ農業をしっかり “つなぐ” 場所にすることを目的に、「かしわで」はスタートしたんです。

「安全と安心は違うもの」
危機に直面した時、そう実感しました。

目立たない場所にありますし宣伝費もなかったので、最初は本当にお客さんが少なかったのですが、出資仲間たちも頑張って3年目からようやく黒字になりました。しかし平成22年、「かしわで」に出荷された春菊から登録外農薬が検出されたんです。すぐにお客様に情報公開して店を閉め、自主検査をして全品目の生産履歴をチェック、現地の畑を調査し、農薬の取り扱いも再確認するなど連日協議を重ねました。店頭に並ぶサンプルの残留農薬検査で全品目150検体、検出ゼロになって安全が確保でき、ようやく直売所を再開しました。
しかしその3カ月後に東日本大震災が起きてしまいました。残留放射性物質検査で数値に問題なく安全だと分かっても、なかなか購買につながらない。その時、安全と安心は違うものなんだなと実感しました。自分たちも知識を持ち、安全のための対策をする一方、安心して地域の野菜を食べてもらうにはどうしたらいいか……そこで、農家の主婦の皆さんによる、地元野菜を使ったレシピを伝える「ハッピィテーブルクラブ」が生まれたんです。
最初はイベントや店頭で野菜料理を提供していましたが、常に食べられる場所がほしいという声が上がって、平成28年直売所の隣に農家レストラン「さんち家」をオープンしました。いまも農家の皆さんがシェフになって、生産者ならではのおいしいレシピで「かしわで」の旬の野菜を使った料理をたくさん食べられるように、ビュッフェ形式で提供しています。

地域の農業を将来に “つなぐ” ため
「かしわで」から情報を発信していきます。

農業は消費者にいろいろと理解してもらわないと “つづいて” いきません。だからこそ、ものを売るだけでなく「かしわで」からできるだけ農業の情報を発信したい。そして、消費者と “つながる” ことも重要だと考えました。
子どもたちに食べ物の大切さを知ってもらえるように、田植えや稲刈り、じゃがいもなどを収穫してもらう農業体験をやっています。学校給食では、もともとうちのお米を提供していた縁があって、「かしわで」の地元野菜も扱ってもらっています。最初は発注が少なく、配達すると採算がとれなかったのですが、子どもたちに農業の情報を伝えるきっかけになればと “つづける” ことを決め、おかげさまでいまではかなりの量の野菜を提供しています。
いろいろ困難はありましたが、長い間やってこられたのは、ほかにやり方が思いつかなかったから(笑)。損得は後回しにして、とにかく “つづける” ことだけを目指してきた結果です。「かしわで」は毎日行くスーパーの延長線上にある直売所。今日買ってもらったら、明日に “つなげる” 売り方をしないとお客さんは来てくれません。だからスタッフに伝えたんです。「ここに来るお客さんはものを買いに来るだけじゃない。元気をもらいにくるんだ。」って。スタッフみんなが元気でなければ、お客さんにも元気を与えられない。だから、ここに集まる農家が元気に “つづけて”くれることが一番なんです。明るくお客さんを迎え入れて、気持ちよく買い物をしてもらって、柏の農業を未来に “つなぐ” 。そういうことが大事だと思っています。
農業はみなさんの食を支えています。これまで我々が “つづけて” きた農業を、これからも “つないで” いかないといけない。そのためには,後継者をしっかり育てていくこと、そして若い世代が農業に誇りを持ち、安心して働ける仕組みをつくることが私の使命だと思っています。

※1 田中農協
当時。田中農業協同組合は平成22年に市川市農業協同組合と合併し、現在はJAいちかわ田中経済センター。

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つづくを、つなぐ。

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柏市は新スローガン、「つづくを、つなぐ。」を掲げます。

柏はこれまで、多くの人、新しい考えを受け入れてきました。
みんなが作り上げてきた今を受け継ぎながら、変化を恐れずに進んでいく。
それは、これからも変わりません。
柏の木は、冬のあいだ枯れた葉を落とさず春を迎えます。
その様子は次の世代にバトンを渡すようです。
私たちも柏の木をお手本に
みんなに愛される柏を、しっかり未来へつないでいきます。
ひとりひとりの知恵と工夫が、よりよいあしたへの大きな力になります。
「つづくを、つなぐ。」まちを、一緒につくっていきましょう。

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市役所正面玄関前(国道16号線側)に大きなかしわの木があります。市役所に来た際はぜひ見上げてみてくださいね。

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