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育てたいのは、地域への誇り。<

#03

広報かしわ 2023年9月号掲載

育てたいのは、地域への誇り。

エリア中央エリア

かしわ民話保存会 会長 柏市観光協会 事務局長中島 貴洋さん

スポーツのまち、音楽のまち、そして自然と都市が広がるまち。柏市観光協会の事務局長、中島貴洋さん曰く「柏はさまざまな“顔”を持っているので様々な魅力を知って好きになってもらいたい」とのこと。「そんな柏をひとりでも多くの人に好きになってもらいたい」と話す中島さんは、地域に伝わる昔話に注目し、令和5年6月に「かしわ民話保存会」を立ち上げました。自転車の荷台に紙芝居をのせた昔ながらのスタイルで、地域の文化と暮らしを色濃く残したむかしばなしを語りつないでいくため、自ら語り部としても活動しています。

人から人へ語りつづけてきたむかしばなしは
これからも人がつないでいきたいのです。

柏市観光協会として、東京オリンピックを目前にインバウンド事業をはじめたのですが、コロナ禍でほぼ稼働できなくなってしまいました。同じ頃、マイクロツーリズム(※1)が注目を浴びるようになり、これなら何か観光事業ができるかもしれないと考えました。調べていくと、柏にはむかしばなしやお話の舞台がたくさんあったので、その場所を聖地巡礼のように回ってもらえたらマイクロツーリズムになるんじゃないかと、3年前に「柏のむかしばなし観光資源化事業」を立ち上げました。

ホームページに「柏のむかしばなし」(※2)を載せて、「お話の舞台MAP」をつくりました。むかしばなしの舞台をめぐるだけでなく、お話に登場し今も残っている観音堂やお地蔵さまなどを実際に見ることもできるんです。舞台になった場所にはQRコードの付いた看板を立て、YouTube動画でもむかしばなしを見ることができる仕組みもつくりました。当初は昭和60年3月に柏市教育委員会が発行した冊子「柏のむかしばなし」に掲載された29話を紹介していたのですが、沼南町が柏市と合併して、沼南地区のむかしばなしも掘り起こしたんです。ほかにも、古い資料をひっくり返したり、代々柏で暮らしている地域の方からヒアリングをしたりして、集めたむかしばなしは全部で44話になりました。
むかしばなしは、おじいちゃん、おばあちゃんがお孫さんに、お孫さんが大きくなったらまたその子どもにと語り“つづけて”きたものだから、やっぱり人の口で“つないで”いきたい。活動をつづけるうちにそう思うようになり、2023年6月1日に柏市観光協会の下部組織として、「かしわ民話保存会」(以下、保存会)を設立しました。

眠ったまま消滅してしまわないように
拾い上げて、後世に残すのも私たちの役割です。

まずは、柏市民のみなさんにむかしばなしの語り部となってもらおうと、柏市観光協会主催で語り部の基礎講座を開講しました。42名の参加者のうち32名の方が保存会のメンバーに。40〜70代と年齢層も幅広く、なかには読み聞かせをやっていた方もいらっしゃるのですが、語り部としてはみなさんゼロからのスタートです。「人前でしゃべれるかしら?」と不安を感じる方もいらっしゃるのですが、一番大事なのは楽しむこと。カンペを見たっていいので、とにかく楽しくやってみる。楽しい気持ちが伝わると人は集まってきます。私も活動する上では、まず自分が楽しむことを心がけています。
保存会では、半年かけてしっかり研修を重ねて、来春には、市内の学校や施設、さまざまなイベントへ語り部を派遣できるようになりたいと思います。また、保存会主催で、定期的に「語り部会」の開催も計画しています。
むかしばなしは、口承文芸といって文字に依らずに人の口によって伝えられてきたものなので、時代とともに消えてしまったお話もたくさんあります。本に載っているお話でも図書館や資料室に眠ったままだと、誰も知らないまま消滅してしまいます。ですから、私たちはこれまで“つづいて”きたむかしばなしを拾い上げて、後世に“つないで”いく活動もしています。むかしばなしが消滅する前に発掘し、記録することも、保存会の重要な役割なのです。

むかしばなしで「つづくを、つなぐ。」
子どもたちのシビックプライドを育てたい。

実は柏のなかでも、増尾という地域には7つもむかしばなしが残っているんですよ。お話に詳しい古老などにより、比較的多く伝えられたのだと思います。増尾は地域のご長老たちが集うコミュニティが充実していますし、増尾町会のなかに「民話の里づくりプロジェクト」が立ち上がっていて、学校とも連携して様々な活動を行っているんです。
増尾にある柏市立土(つち)小学校の校長先生からは「ぜひ生徒たちにお話や地域の歴史を聞かせたい」と依頼があり、昨年から私が授業を受け持って教えるようになりました。むかしばなしは、地域の歴史と密接な関係があります。増尾にいた「からす天狗」のお話、相馬氏という武将がいたことや城跡が2つも残っているお話を知って、「びっくりした」という子や、「もっと調べたい」という子もいました。令和5年には、6年生に「『土(つち)地域観光協会』を立ち上げて増尾のむかしばなしや歴史、文化、いいところなどを自分たちで調べて情報発信してください」と、柏市観光協会からお願いをしたんです。いま一生懸命取り組んでいると思います。私もアドバイスしますが、仕上がりが楽しみです。
私は、地域で“つづいて”きたむかしばなしを“子どもたちにつないでいきたい”という思いがあるんです。語り部は本来何も持たずにお話をしますが、子どもたちも物語の世界に入りやすい紙芝居を重要なツールとして活用しています。私たちが語りつづけていくことで、柏の歴史や文化を知ってもらい、地域への愛情や誇りを持つことにつなげられたら。むかしばなしを通じ、永続的に子どもたちのシビックプライド(※3)を育むことができるとうれしいです。

※1 マイクロツーリズム
自宅から1時間圏内の移動距離内で、地元や近隣へ観光する近距離旅行。地域の魅力の再発見と地域経済への貢献を念頭においた旅行形態。

※2 「柏のむかしばなし」(柏市観光協会ホームページ)
https://kankou.kashiwa-cci.or.jp/folk-tale/

※3 シビックプライド
「地域に対する住民の誇り、愛着」を表す言葉。自分たちの住むまちをより良く、誇れる場所に磨き上げていくために、自分自身が関わっていくという意識を伴う、ある種の当事者意識に基づく自負心のこと。

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つづくを、つなぐ。

スローガンについて

柏市は新スローガン、「つづくを、つなぐ。」を掲げます。

柏はこれまで、多くの人、新しい考えを受け入れてきました。
みんなが作り上げてきた今を受け継ぎながら、変化を恐れずに進んでいく。
それは、これからも変わりません。
柏の木は、冬のあいだ枯れた葉を落とさず春を迎えます。
その様子は次の世代にバトンを渡すようです。
私たちも柏の木をお手本に
みんなに愛される柏を、しっかり未来へつないでいきます。
ひとりひとりの知恵と工夫が、よりよいあしたへの大きな力になります。
「つづくを、つなぐ。」まちを、一緒につくっていきましょう。

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かしわの木は、新しい葉が出ないと今ある葉が落ちないということから、次の世代へ絶えることなく結ばれる、縁起のよい木とされています。

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市役所正面玄関前(国道16号線側)に大きなかしわの木があります。市役所に来た際はぜひ見上げてみてくださいね。

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市の木かしわは、昭和45年11月に選定。どっしりとたくましい形と市名との一致が理由で選ばれました。

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