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地域の技術を、新たな産業に。<

#08

広報かしわ 2024年4月号掲載

地域の技術を、新たな産業に。

エリア北部エリア

TXアントレプレナーパートナーズ 理事後藤良子さん

産業技術総合研究所や国立がん研究センター東病院といった研究機関、東京大学や千葉大学などの学術機関があり、東葛テクノプラザや東大柏ベンチャープラザなどのインキュベーション施設も点在している柏の葉エリア。技術開発・研究面で設備が充実しているこのまちで、地域の特性を活かしたスタートアップ(※1)を支えているのが、TXアントレプレナーパートナーズ(以下、TEP/※2)の理事を務める後藤良子さんです。柏で新しい産業を生み出すため、日々どのような活動をされているのか、お話を伺いました。

日本有数の大学・研究機関が集まるまちで
“新しい産業”を生み出すために。

私は平成18年の柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK/※3)の立ち上げから、柏の葉のまちづくりに携わっておりまして、まちの「新しい産業の構想づくり」を担当していました。どうやったらまちのポテンシャルを活かした産業を生み出していけるのか。地域の強みを活かすことで地域に持続可能な仕事をつくりだすにはどうしたら良いかを考えてきました。

柏の葉エリアだけでなく、柏の市街地やつくばエクスプレス沿線までエリアを広げて、どういう資源があるのかを調べていくと、日本有数の大学や研究機関が集積していたんです。各機関で先進的な研究開発を行っていたり、唯一無二の技術を持っていたりすることが分かったのですが、それらを事業化し社会に普及させなければ新しい産業を生み出すことはなかなか難しい。そこで、平成21年11月に技術の事業化を目指すスタートアップの支援組織、TEPが誕生しました。

スタートした当初は若かったせいか(笑)、“柏の葉に産業を生み出す”という大目標のプレッシャーよりも、ワクワク感の方が強かったですね。最初は本当に理想を形にしたような世界を思い描いていましたから。柏の葉は何もなかった状態から知っているので、まちが出来上がっていく様子を見るのは嬉しかったですし、オフィスビルが建っていくと少しずつ「人が働く場になっている」という実感も湧いてきました。

あくまで起業は第一歩、
長い道のりを歩むスタートアップの成長を支える。

現在私はTEPの理事として、柏市を含めたつくばエクスプレス沿線の自治体、大学、研究機関の皆さんと連携しながら、地域で生まれた技術を基にしたスタートアップ事業の育成、コミュニティの構築や支援の仕組みづくりに携わっています。

TEPでは、ビジネスを始めるとき、あるいは外部のビジネスパートナーと“つながって”何かを動かしていくときに必要なノウハウをアドバイスしたり、場合によってはビジネスプランそのものをいちから一緒につくったりすることもあります。“メンター”と呼ばれるメンバーがたくさんいるので、壁打ち相手となってビジネスの悩み相談にも乗ってくれます。起業はあくまで最初の一歩。そこから長い道のりが待っているので、起業後もTEPではメンタリングを続けているんです。

令和5年からは、柏市で始まった「スタートアップ・コンシェルジュ事業」(※4)を受託し、柏市内の方、柏市に関心のある方のスタートアップの相談窓口になったり、コミュニティを育てるために交流の場をつくったり。また、柏市がスタートアップにとってどんな魅力があるのか、情報発信のサポートもしています。KOIL(※5)で行っている「KOIL STARTUP PROGRAM」(※6)のように、2023年はTEPが積み重ねてきたことと、柏市の取り組みがうまく重なり始めて、柏の葉ならではの「公・民・学」連携の仕組みが、スタートアップ育成の面でも出来てきたという実感があります。

地域の技術を、社会から必要とされる事業に。
技術者・研究者たちの「つづくを、つなぐ。」

大事なのは、ビジネスをなんとか成長させたいと思っているスタートアップが、本当に必要な情報を得ることができて、出会えてよかったと言えるメンターと出会えること。そのつながりを、私たちがしっかり温めていくことだと思います。起業しやすい環境づくりに力を入れて、私が把握できないくらいスタートアップがどんどん増えていくような状況が実現した暁には、柏の葉に留まらず、つくばエクスプレス沿線一帯が「日本の技術力を活かした産業」を育む場になったらいいなと思いますし、それがTEPの目標でもあります。

技術者・研究者の皆さんが“つづけて”きた素晴らしい技術開発は、社会に出て広く人の役に立ってこそ、後世に“つながる”ものだと思っています。世界一の技術も、研究室で眠ってしまったらもったいないです。しっかり社会に還元していく仕組みを作って、永続させるためには事業として成功しなければなりません。事業が成功するということは、社会から必要とされるということ。そこにしっかりつなげていきたいですし、TEPはそのコアの部分を少しでも多く後押し出来ればと思っています。

※1 スタートアップ
新しいビジネスモデルで革新的な事業を立ち上げ、短期急成長を目指す企業のこと。

※2 TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)
日本のトップレベルの技術をビジネス化し社会普及させることを目的として、2009年11月19日に設立されたスタートアップの支援組織です。

※3 UDCK
柏の葉アーバンデザインセンター(Urban Design Center Kashiwa-no-ha)の略。柏の葉のまちの“未来”を議論し、それを形にしていく(デザインする)ために、まちに係る多様な人々が従来の組織や立場を超えて日常的に集うための場所です。

※4 「スタートアップ・コンシェルジュ事業」
令和5年5月より、柏市がTEPと協力して開始したスタートアップ支援事業。TEPでは、事業全体の企画・運営・管理を行うジェネラルマネージャーと、スタートアップ企業の個別相談に対応するローカルマネージャーを選定。柏市内外のスタートアップを対象に、相談受付・メンタリング、コミュニティ形成、プロモーション活動等、事業の発展に必要な支援をする。

※5 KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)
柏の葉スマートシティのイノベーション拠点。ビジネス活動を支えるための多様な施設・設備と、意欲ある起業家や事業者が交流・共創するための仕組み・取り組み、そしてスタートアップを支援するプログラムが揃っている場所。
公式HP https://www.koil.jp

※6 「KOIL STARTUP PROGRAM」
柏の葉スマートシティの「新産業創造」を牽引する、スタートアップ企業のための事業成長プログラム。三井不動産が主催、TEPが企画運営を行うこのプログラムに、令和5年よりスタートアップ支援を本格化している柏市が共催として参画。コワーキングスペースの1年間無料利用、ビジネスプラン構築セミナー、専門家による個別メンタリングなど、事業の初期段階で必要な環境を提供し、成長を後押しする。

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つづくを、つなぐ。

スローガンについて

柏市は新スローガン、「つづくを、つなぐ。」を掲げます。

柏はこれまで、多くの人、新しい考えを受け入れてきました。
みんなが作り上げてきた今を受け継ぎながら、変化を恐れずに進んでいく。
それは、これからも変わりません。
柏の木は、冬のあいだ枯れた葉を落とさず春を迎えます。
その様子は次の世代にバトンを渡すようです。
私たちも柏の木をお手本に
みんなに愛される柏を、しっかり未来へつないでいきます。
ひとりひとりの知恵と工夫が、よりよいあしたへの大きな力になります。
「つづくを、つなぐ。」まちを、一緒につくっていきましょう。

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